デジタル技術の進歩はこれまでには考えられなかった、画像の補正術を生みました。フィルム上の傷を、同じ要素が写っている別の駒から抜き出した画像を合成することによって消す技術です。経年変化により、物理的にフィルム上に生じたものが、修正できるのです。また、ビデオ信号上では比較的簡単に画像の合成が行えるため、フィルム上の染みなどもある程度は修正できます。フィルムの駒が失われ、黒い駒を繋ぎに使っている部分の修正もできます。とはいえ、映画は動く映像の連続です。以上に述べた補正方法では、動きが不自然になり修正できない場合があります。

 第一回発売作品のマスターが上がってきました。最初に言い訳じみたことを書かせていただいたのは、デジタル技術とて万能ではないということを分かっていただこうと考えてのことです。CGIなどで、傷の部分をレタッチすることも可能ですが、やりすぎるとこれは「新規に制作した映像」になってしまいますし、映画としてのフィルムの質感を失うことにもなりかねないからです。ちなみに『赤ひげ』では後半部分にある、オプチカル作業のミスとしか思えないワイプのずれを修正しました。なぜかワイプで画面下から現れる画面が、ワイプ終了の画面とズレていたのです。
 
 『姿三四郎』から『デルス・ウザーラ』(BOX1の作品で一番古いものと新しいもの)まで、作品によりフィルムの状態は異なりますが、
現状で望みうる最上のマスターを制作することを心がけました。画面の明るさの調整、スクリーンサイズをどこまでモニター上に再現できるか。斎藤孝雄キャメラマンに監修していただいたおかげで、コントラストのある引き締まったモノクロ映画独特の画像がお楽しみいただけると思います。

 また、劇場上映の際、ロールチェンジの目印に付けられた、画面右上のパンチ穴。劇場で見ているときには意外と気にならないものですが、なぜかモニター上では少々目障りなものです。このパンチ穴も
可能な限り補正しています。

 怪獣映画ファンからは『ゴジラ』(昭和29年)をDVD化した際にその画質、キズやパンチ穴の補正、そして音の補正など、よくやったと評価していただきました。『ゴジラ』のDVD化にあたっては、HD24Pでのテレシネこそ行いませんでしたが、今回の黒澤明監督作品と同様の画像・音声の補正作業を行っています。『ゴジラ』は黒澤明監督作品と並ぶ、日本映画を代表する作品であること、また黒澤明監督作品をDVD化する際の技術的なテストをするためでもあったのです。